洋服のスタイリングによって、トレンドと自身のセンスを表現するスタイリストという仕事。

そのファッションのプロに、時代が変わっても思い入れを持って長く愛用している洋服について語っていただきます。

今回は、ファッション誌「ViVi」をはじめ、広告やテレビ出演など幅広く活躍されている、スタイリスト知念美加子さんに、オシャレを楽しむこととは、愛用の1着との出会いやその魅力について、お話を伺いました。

プロフィール

スタイリスト 知念美加子(ちねんみかこ)

沖縄県那覇市生まれ。ファッション誌「ViVi」を中心に活躍後、広告やカタログなどのスタイリングも手掛け、テレビ番組への出演など活動の場を広げている。

2016年には自身初のファッションブック「STYLIST」を出版。現在は那覇市内でセレクトショップの経営も手掛け、多方面で活躍中。 

Instagram @chinenmikako

ハズしや癖のあるスタイリングが得意

スタイリストとしてご活躍されている知念さんですが、仕事上スタイリングで気を付けていること、得意なスタイリングはありますか?

肌面積を考えたトータルバランスを重視していますね。

それと、ハズしや一癖をつけた違和感(いい意味で)を持って貰えるスタイリングを意識しています。

具体的にはどんな風にスタイリングをするのですか?

例えば、ドレスにスニーカーを合わせる。

その際、肌面積が多いキャミミニドレスならジャケットを羽織る、肌面積が適度なキャミロングドレスならアクセや小物で一癖つける、といったイメージです。

言葉にすると難しいですね。笑

テイストをミックスしたり、肌露出のバランスをみたり、小物でアクセントをつける、といったスタイリングを掛け合わせているんですね。奥深いです。

自分のスタイリングはインプットから

知念さんご自身がいま好きなスタイルはありますか?

「今はコレ!」というこだわりは特にないのですが、その時々でインプットしたものに影響されることは多いです。

たとえば映画、コレクション、フォトブックなどですね。

コレクションのランウェイ画像や最新のファッション情報を得られる「VOGUE RUNWAY」もインプット先のひとつ(画像出典:「VOGUE RUNWAY」

最近でいうと、コレクションを見て、大きめシャツにダボっとしたボトムスを合わせるシルエットを大人らしく上品に着こなすスタイルに影響されました。

オーバーサイズの服に、シティ感のある小物やシャツなどカチッとしたものを合わせることで、上品さをプラスしています。

ずるっとしたシルエットを引き締める小物づかいでこなれ感ある大人のスタイルに(ご本人スタイリング)

30代後半になって、大人の品を身につけたいと思うようになりました。笑

ご自身でもテイストのミックスを楽しまれているようですね。

知念さんのスタイリングにはさまざまな「インプット」がキーになっている気がします。

逆にこれまでご自身のスタイリングの遍歴を辿って、変わっていない部分はありますか?

ちょっとしたクセを取り入れるのは昔から変わってないかなと思います。

自分のコンプレックスを払拭したくて言っていた「オシャレは自由」と言う言葉通り、昔も今も変わらず自由に表現しています。

知念さん愛用の1着 - DRIES VAN NOTENのワイドパンツ

では自由にオシャレを楽しむ中で、知念さんが長く愛用している1着を教えてください。

ブランド「DRIES VAN NOTEN」 のワイドパンツ

2016年、ロンドンの百貨店で購入した「DRIES VAN NOTEN」のワイドパンツです。

ロンドン留学中に見たコレクションで一目惚れしたヒョウ柄のパンツで、実際に着てみたい!と思い、取り扱い店舗を探しました。

なぜロンドン留学をすることにしたのですか?

単純にイギリス英語に触れたいと思ったのがきっかけではありますが、スタイリストとして日本のトレンドを追いかけるのに少し疲れてしまった事も理由のひとつでした。
 
凝り固まった価値観や視点を外に出ることでアップデートし、もっと広げていきたいという思いもありました。

アップデートすべく留学した先で、運命の1着に出会ったのですね。

そのパンツの魅力について教えてください。

アニマル柄やヒョウ柄は、大きさやデザインによって時代に影響されやすい(流行り廃れが大きい)アイテムですが、強くてカッコいいヒョウに魅了された私のアイコン的存在なんです。それで、このパンツを一生ものとして迎えました。

小さい頃からカッコいい女性に憧れていたこともあり、ヒョウ柄は好きな柄でした。

それまではロックや甘辛ミックスで取り入れていたアイテムでしたが、ロンドンでみたコレクションのLOOKは、プレッピーなブレザーと合わせた”大人なヒョウ柄の着こなし”で、当時30歳目前の私に刺さったのだと思います。

とにかく上質でシルエットも完璧。コレを着ると不思議と身が引き締まるんです。
ベロア素材なので秋冬のアイテムですが、流行りに関係なく毎年肌寒くなると出してきて着ています。

自分の「好き」の軸は持ちつつもインプットを大切にし、時代の気分を軽やかに取り入れるスタンス。それが知念さんらしく自由にオシャレを楽しむコツなのかもしれません。

永く愛用するこちらのパンツについて「これから歳を重ねた時に、また違う着こなしが出来そうで、とても楽しみ」と話す知念さん。体型や健康のバロメーターにもなっているそうです。

※こちらの記事の内容は原稿作成時のものです。最新の情報と一部異なる場合がありますのでご了承ください。

この記事を書いたひと
キタ kita

キタ kita

紙からWEBまで幅広いテーマで制作する編集者です。クリエイティブのディレクションも行います。