本企画では、北欧ヴィンテージ食器に魅了された3名の方に、大切な愛用食器とその魅力について伺いました。

いまやインテリアではすっかりお馴染みの北欧雑貨や北欧食器。人気の波は加速し、北欧ヴィンテージへの注目も高まっています。

「ヴィンテージ食器ってどんなデザインがあるの?」「どんな魅力がある?」「出会いのきっかけは?」と、興味はありつつも、手を出せないでいる方も多いのではないでしょうか。

本企画では、北欧ヴィンテージ食器に魅了された3名の方に、大切な愛用食器とその魅力について伺いました。

① ウェブストア「カウニートアシアット」店主が選ぶ北欧ヴィンテージ食器

ウェブストアだけでなくPOP UPストアを実施することも

「フィンランドを旅しながらみつけた美しきモノコトを、新たな価値と共に日本で伝承していくことを生業としています」と語るカウニートアシアットの店主。フィンランドでデザインされたものを取り扱う中で、日々の暮らしで使用する器も、年々増えているそうです。

お仕事として日々北欧食器に携わる店主が、プライベートで愛用している食器についてご紹介いただきます。

プロフィール

カウニートアシアット店主

2020年にフィンランドデザインを扱うウェブストアを開設。

店名の”kauniit asiat”はフィンランド語で、「美しきモノコト」という意味。フィンランドのデザインで”人々の心と暮らしを豊かにする”ことをコンセプトとして主にウェブストアを運営。年数回はPOP UPストアを開店し、ショップの世界観を具現化。テーブルウエアをはじめ、インテリア雑貨、ファブリック、書籍に至るまで、フィンランドにまつわるさまざまなアイテムを取り扱い、北欧フィンランドを旅して集めた「美しきモノコト」を日本のお客様へと届けている。

Iittala Viva/ガラスプレート(フィンランド)

厚みのあるガラスに、最小限に施されたシンプルな装飾が印象的。プレーンなクリアガラスの食器は何にでも合わせやすく飽きもこないのがいいところ。

ARABIA Kaari/陶器プレート(フィンランド)

そっけない程の白に、日本の青海波を思わせる紋様がモノトーンで描かれている。一見用途を選びそうな気難しさを感じるけれど、いざ使ってみるとその逆で、お菓子(特に焼き菓子)との相性がとてもいい。

Nuutajarvi Helmi/デザートボウル(フィンランド)

太くてまっすぐなステムに平たいボウルの付いた、ちょっと無骨な佇まいがかっこいい。Helmi(真珠)の名の由来はステムの中に閉じ込められた気泡上の装飾から。飾っておくだけでも楽しめる器だと思う。

カウニートアシアット店主がセレクトしたフィンランドの食器たちは、シンプルでシャープな雰囲気の中に、どこか愛嬌が感じられる食器たち。ヴィンテージでありながらも今の暮らしにしっくり馴染む、色褪せないデザインです。

② フォトグラファーHanayuriさんが選ぶ北欧ヴィンテージ食器

商品撮影時のスタイリングも自身で行う

フリーランスフォトグラファーとして、自宅で商品撮影を行うhanayuriさん。北欧の雑貨や家具を扱うショップで働いた経験から北欧食器への愛着が芽生え、趣味で集めたヴィンテージ食器のある暮らしをYouTubeで発信しています。インテリアや植物、キャンプ、料理、コーヒーといった、hanayuriさんの好きなものに囲まれた日常の中に、愛用のヴィンテージの食器が馴染んでいました。

プロフィール

Hanayuri(はなゆり)

フォトグラファー/アクセサリー作家

インテリア、植物、コーヒー、料理、キャンプが趣味。憧れの暮らしを切り取るような心地よい商品撮影を数 多く担当し、スチールに留まらずムービーの制作も手掛ける。その世界観にファンも多く、YouTubeの チャンネル登録者数は5.8万人、Instagramのフォロワー数は1.3万人にのぼる。

GUSTAVSBERG Bersa/カップ&ソーサー(スウェーデン)

スウェーデン旅行中にGUSTAVSBERGで見つけたもの。現地で出会った人々や町並み、そして旅の思い出を含めて特別な食器。

Kronjyden Relief/カップ&ソーサー(デンマーク)

コレクションを始めた8年ほど前に出会い、初めて購入した食器。以来、北欧ヴィンテージの中で最もコレクションの多いシリーズ。ヴィンテージならではの優しい色合いはテーブルコーディネートやインテリアに自然に溶け込み、日常づかいでも活躍している。

※DANSKの創立者でもあるJens.H.Quistgaardがデザインしたシリーズは、製造元を変えながら1950~1980年台に作られ人々に長く愛されている

Kronjyden Azur/カップ&ソーサー(デンマーク)

Reliefシリーズと同じ、Jens.H.QuistgaardがデザインしたAzurシリーズ。落ち着いた青の色合いが魅力的なカップ&ソーサーは、誕生日に夫から贈られたもの。手にした瞬間から生涯大切にしたいと思えるほど気に入っている。

Hanayuriさんがセレクトしたデンマークのカップ&ソーサーは、立体的な連続柄と奥深い色味が特徴的。可愛らしさだけでなく釉薬の濃淡が味わい深いシリーズです。スウェーデンの色鮮やかな葉モチーフは、北欧を代表する人気のデザインです。

③暮らしと備えのアドバイザー藤田実沙さんが選ぶ北欧ヴィンテージ食器

防災をはじめ、暮らしに関する多角的な取り組みを行う

暮らしと防災講座の開催や防災ポーチのプロデュース販売を手掛ける藤田さん。10年ほど前から始めたInstagramでは、防災アイデアのほか、趣味のインテリアや北欧食器を楽しむ暮らしを発信しています。2016年には初の著書「北欧テイストのシンプルすっきり暮らし」を出版。

そんな藤田さんの愛用食器は、お仕事でもある「暮らし」に根付いた身近な存在のようです。

プロフィール

藤田実沙(ふじたみさ)

防災士/整理収納アドバイザー

大阪府北部地震をきっかけに防災に目覚め、Instagramで「暮らしに馴染む備え」の情報発信が人気となり、フォロワー数は14万人を超える。日本各地にて防災講座を開催する傍ら、ラジオvoicyでも暮らしや片付けについて発信。著書には「北欧テイストのシンプルすっきり暮らし(2016)」のほか、「おしゃれ防災アイデア帖(2021)」、「おうち防災アイデア(2025)」がある。

Arabia Faenza/陶器のプレート(フィンランド)

イタリアのファエンツァで開かれたコンペティションで金賞をとったことからこの名前がつけられた。コレクションの中で、初めて購入した食器。自身にとって高価な食器だったので「これから一生大切に使おう」と思ったのを思い出がある。ブラウンの小花柄はかわいすぎず、かっこよさもあるため、華のあるいちごのショートケーキにも、大人のテイスト漂うティラミスやモンブランにも相性が良い。

Arabia Apila/カップ&ソーサー(フィンランド)

アピラは、フィンランド語でシロツメクサ・クローバーの意。1971年から数年間のみ生産されたが、人気のため2006年に復刻した希少なシリーズ。子どもが幼い頃に子育てで孤独を感じていたとき、ビューローに飾ったアピラのC&Sにとても元気をもらった思い出。北欧インテリアに囲まれた家の空間が、当時の自分にとって癒やしの場所となっていた。

インテリアに色ものを取り入れる機会は少ないが、食器なら取り入れやすく、春を感じる時期に毎年飾りたくなる大好きな柄。

Gustavsberg SPISA RIBB/陶器のプレート・カップ&ソーサー(スウェーデン)

Stig Lindbergによるデザインで、1955年にスウェーデン国民のデザイン意識が大きく変わるきっかけとなった「H55展」で発表された。アンティークのものと復刻版がある。

縁取りと放射線状に描かれた線が素敵なデザイン。線のかすれや手書きらしいゆらぎもあり、ストライプもブラウンも好きな自分は一目惚れ。シンプルながらもかっこよさがあり、テーブルコーディネートが引き締まるところが魅力。

藤田さんご愛用の食器には、どれもパターン柄が施されています。甘すぎずとも可愛らしいデコレートの食器たちはテーブルを華やかにし、暮らしに豊かな表情を加える逸品といえるでしょう。

北欧ヴィンテージ食器に魅了された3名の方に、さらにお話を伺いました

愛用の北欧ヴィンテージ食器も、国や時代によってさまざまなテイストがあります。その魅力はどこにあるのでしょうか。北欧ヴィンテージ食器との出会いとともに伺ってみました。

皆さんのヴィンテージ食器との出会いは何ですか?

カウニート
アシアット
店主

元々器が好きで、北欧のヴィンテージに出会う前から日本の骨董などにも興味があり、時々手にしていました。

2016年に初めてフィンランドを旅しました。

その際ヘルシンキのデザインミュージアムを訪れ、Birger Kaipiainen(ARABIA Paratiisiの作者)のビオラの木と名の付けられた大型作品を見て、その世界観に感銘を受けたことが北欧食器に興味を持ったきっかけになったと思います。

Hanayuri

出会いは以前働いていたインテリアショップですが、ヴィンテージ食器に魅了されたのは、フィンランドに新婚旅行で行ったことがきっかけです。

Arabiaの本社やIittalaやスウェーデンのGUSTAVSBERGに実際に出向き、北欧食器への愛着がこれまで以上に深まりました。

藤田実沙

結婚をきっかけに、自分の家のインテリアやモノ選びに興味を持つようになりました。

1LDKの賃貸マンション暮らしからスタートし、狭いながらも自分が本当に好きなものだけに囲まれて暮らしたい! と思っていたときに観た、映画「かもめ食堂」。

そこから北欧の暮らしに興味を持ち、北欧ヴィンテージ家具や訪れた店先にずらりと並ぶヴィンテージ食器に惚れました。

心ひかれるヴィンテージ食器のジャンル、傾向など、その特徴を教えてください。

カウニート
アシアット
店主

ヴィンテージ食器に興味を持った当初は、カラフルな絵付けのある食器に目が行きがちでしたが、ここ数年はシンプルな無地の陶磁器や、ガラスの食器に心惹かれています。

北欧デザインの素晴らしさは色柄が面白くバリエーション豊かなことはもちろんなのですが、フォルムの美しさ、面白さを追求しだすと更に沼が広がってしまいました。

自然をテーマとしたTapio WirkkalaやOiva Toikkaが手がけたガラス物は特に興味深く、関心を寄せています。

Hanayuri

製造年代ごとに刻まれるバックスタンプが微妙に異なり、それが魅力の一つです。

手書きのバックスタンプにも絵付け師さんの個性があり唯一無二。

その中から自分のお気に入りを選ぶ楽しさは、コレクションの魅力です。

藤田実沙

手書き感のあるものに心惹かれます。

まっすぐ引かれていない線や、少しかすれたバックスタンプも好きです。

また、縁取るように柄が描かれているプレートは、食べ物を乗せても柄が隠れてしまわないので好んで集めています。

サイズは圧倒的に17cmのケーキプレート。どこまでも集めたくなります。

北欧食器はなぜ多くの人の心をつかむのか

その国の人々の暮らしや考え、感性に触れて、つくられた背景とともに楽しむからこそ、愛着が生まれるのかもしれません。ヴィンテージに限らず、北欧食器が現代の人々に受け入れられているのはなぜでしょうか。

これぞ北欧食器と思えるメーカーとシリーズを3つ教えてください。

カウニート
アシアット
店主

「Iittala TEEMA」
「ARABIA Paratiisi」
「Marimekko(Iittala) Mariskooli」

Hanayuri

「ARABIA Paratiisi」
「Iittala TEEMA」
「Marimekko Unikko」

藤田実沙

「Iittala TEEMA」
「MOOMIN ARABIA MAG」
「Iittala Origo」

さいごに、北欧食器はなぜ多くの人の心をつかむのだと思いますか?

カウニート
アシアット
店主

フィンランドに限っては王室や皇室にあたる制度がなく、衣食住に係るあらゆるものが、庶民の暮らしに根ざすことを前提に作られています。

小さなスペースでも重ねて収納できることや、丈夫で長く使えることを考慮して産み出された機能的なデザインは、50~60年経ってもなお、今の暮らしに違和感なく馴染みます。

特にARABIAやIittalaの食器は、同じ型を用いて色柄のみ変化したモデル統一形式のものが多く、買い替えず買い足すことが出来るのも魅力です。型を揃えて増やしていけば収納面でも困りません。

きちんとメンテナンスして大切に扱えば、生涯共に暮らせる素晴らしき相棒になるだろうと思います。

Hanayuri

北欧の人々は、愛着のあるものを大切にし、長く大切に使うという考え方を持っています。

特に北欧の食器は、そのシンプルで美しいデザインと機能性から、世代を超えて受け継がれていくことが多いそうです。

私もお気に入りの食器を大切に使いながら、将来は子供にも受け継いでもらいたいと考えています。

藤田実沙

北欧食器は、カラーが豊富であることが魅力の一つだと思っています。単品使いよりも、さまざまな色を合わせることで、より華やかなテーブルコーデになります。

わが家でもっとも出番が多いのはイッタラ TEEMAの17cmプレート。あえて1枚ずついろいろなカラーを揃えています。

また、シンプルで使いやすいデザインが多いことも人気の理由だと思います。

デザインだけでなく、日常使いしやすいことがポイントです。

本企画では、ゆかりある3名に北欧食器の魅力、そしてヴィンテージ食器の魅力を存分にお伝えいただきました。

まだまだ奥深い北欧食器の世界、皆さんも暮らしに取り入れてみてはいかがでしょうか。

※こちらの記事の内容は原稿作成時のものです。最新の情報と一部異なる場合がありますのでご了承ください。

この記事を書いたひと
キタ kita

キタ kita

紙からWEBまで幅広いテーマで制作する編集者です。クリエイティブのディレクションも行います。