遺品整理士のteoと申します。遺品だけでなく、生前整理も承っております。

これまでさまざまな現場で遺品整理や生前整理のお手伝いをしてまいりました。今回はその中で、私が特に気になる「デジタル生前整理」について解説いたします。

生前整理は、資産や家財だけでなく、デジタル上の遺品になるものを整理することになります。例えば、ネット銀行やFXなど大きな資産に繋がるものも多く、そもそもパソコンやスマートフォンのパスコードが分からずに遺品整理や財産贈与ができないと嘆くご遺族が多いのが現状です。

そこで今回は、あなたが生前にできるデジタル遺品の生前整理と、デジタル遺品でよくあるトラブルを3つ紹介していきましょう!

自分で行う生前整理で大切なこととは

生前整理とは、お元気なうちにご自身が所有している資産や家財などを整理することです。高齢になってから生前整理を行うイメージがありますが、30〜60代のお元気で体力があるうちに生前整理しておくことで、スムーズに整理整頓が可能になります。

生前整理は、悪い言葉を使えば“死に支度”と呼ばれますが、とんでもございません。自らの意志で若い内に生前整理を行うことで、ご自身の意志を尊重し、将来に向けた準備が整います。

また、残されたご遺族も「どこに」「何が」「どのような形で」保管されているかが明確になれば、あなたの死後に処分すべきか、それとも遺産として特定の人物に相続するのか判断しやすく、手続きも円滑に進められます。

デジタル生前整理は何歳から・いつから始めるのか? やり方も解説!

生前整理には整理すべきものが主に3つあります。

  1. 家電製品や衣類・思い出の品などのモノ
  2. 貴重品や財産など(金銭)
  3. パソコンやスマートフォン内のデジタル遺品となるもの

特に3つ目のデジタル遺品になるものについては、「どうやって処分すればいいの?」「確実に処分する方法は?」「残したいデータはどうやって保管すればいいの?」など、このような疑問を思い浮かべる方が多いと思います。

そこでここからは、上記3点に関する整理方法をご紹介します。

1. 残したいデジタル遺品の生前整理方法

近年デジタル生前整理をクラウド上で行う方が多く、例えばiCloudやDropboxなどに保管することで、万が一災害が起きた場合も別の端末からログインすればデータの閲覧が可能です。

しかしクラウド上に保存するだけでは、データの誤った消去やハッキングなど心配ですよね…

そこで、HDDやUSBメモリーを利用し、同一のデータを複数の場所にバックアップしておきましょう。

2. どうやってデジタル遺品を処分すればいいの?

スマートフォンやPC、タブレット端末ごとに決められた方法で初期化すれば、出荷時の状態に戻すことができます。

出荷時の状態に戻すことで、不要なトラブルを防ぐことができます。必要なデータだけをクラウドやHDD・USBメモリーに保管しておけばスマートフォンを初期化しても安心です。大切なデータをHDDやUSBメモリーなどに移動したら、他のスマートフォンやPC・タブレット端末内の情報は不要ということになります。

まずは、広く利用されているAndroidとiPhoneの初期化方法をご紹介します。

※余談ですが、USBメモリーを直接接続して簡単にデータ移行する方法もあります。

Androidの初期化の方法

  1. 設定画面を開く
  2. 「システム」「詳細設定」「リセットオプション」の順にタップする
  3. 「すべてのデータを消去(出荷時リセット)」をタップする
  4. 内容を確認して、「全てのデータを消去」をタップする

※Android 11以降の場合

iPhoneの初期化方法

  1. ホーム画面から「設定」をタップする
  2. 「一般」をタップする
  3. 「転送もしくはiPhoneをリセット」をタップする
  4. 「すべてのコンテンツと設定を消去」をタップする
  5. 「続ける」をタップする
  6. iPhoneのパスコードまたはAppleIDのパスワードを入力する
  7. 「iPhoneを削除」をタップする

※iOS 15以降の場合

以上でAndroid、iPhoneともに出荷時の状態に戻すことが可能ですが、メーカーや機種によって方法が異なります。スマートフォンの場合は、機種情報(例:裏面に記載されているモデル名など)を、パソコンの場合も機種情報やOS情報をエンディングノートに記載しておくと良いでしょう。

【参照】

3. 確実にデジタル遺品を処分したい場合はどうすればいいの?

その道のプロの手にかかれば、初期化済みのスマートフォンやPC・タブレット端末でも復元されてしまう可能性があります。

特にパソコンの場合、インターネット上にデータを復元する方法が公開されているため注意が必要です。スマートフォンも同様で、特にAndroid端末はデータの復元が可能な場合が少なくないとされています。

ここからは、パソコンやAndroid端末の完全なデータ消去方法について解説していきましょう。

パソコン、特にWindowsユーザーの場合、「ゴミ箱」を空にするだけでは簡単に復元されてしまいます。PCには、決して情報が漏れてはいけないデータや個人情報があるでしょうから、「完全消去」をしてHDD上のデータを消去するしかありません。なお、「フォーマット機能」や「リカバリー機能」で削除されたデータも復元される恐れがあります。

完全にHDD内のデータ情報を消去するには、

  1. パソコンからHDDを取り出してハンマーなどで物理的に破壊する
  2. 強磁場を当てられる業者に依頼してHDDを使用できない状態にする
  3. 専用のパソコンデータ消去ソフトを使って完全削除する(もともと入っている場合有り)
  4. 市販のデータ消去用ソフトを購入してデータを完全消去する

上記4つの方法がPCのデータを完全に削除する方法です。

デジタル生前整理でトラブルになりやすい3つのポイント

これまでに紹介してきたデジタル生前整理の対象は、やがて“デジタル遺品”となります。

デジタル遺品に明確な定義はありませんが、一般的には「デジタル環境上で実感できる遺品」のことです。例えば、スマートフォンやパソコンなどに保管されている写真や動画などのデータが代表的でしょう。

デジタル遺品とは、スマートフォンやパソコンなどの実際に手に触れられる物理的なものと、これらデバイス内部に保管されている写真や動画などのデータのように手に触れられないものの2つに分けられます。

さらに、写真や動画だけでなく、ウェブサイトの検索履歴や、文書ファイル、ログインすることで利用できるデジタルサービスもデジタル遺品に含まれるでしょう。また、インターネットを介して接続するので、インターネット接続契約もデジタル遺品として扱います。

主にデジタル遺品として扱うことができるもの

  • スマートフォンなどの端末
  • スマートフォンなどの内部にあるすべてのデータ
  • インターネット回線契約

ここからは、特に多いデジタル遺品のトラブルについて解説していくのでぜひ参考にしてみてください。いずれの場合も、エンディングノートに事前に情報を整理し、各データにアクセスするための情報を残しておくことが重要になります。

トラブル① スマートフォンの画面ロック解除番号がわからない

スマートフォンの画面ロックを解除するには、端末を初期化する必要があります。

初期化を行うことで画面ロックは解除されますが、端末内のデータも同時に消去されるため、事前にクラウドやUSBメモリーなどへバックアップを取ることが重要です。

特にAndroidでは「Googleアカウント認証」、iOSでは「アクティベーションロック」が有効になっている場合、初期化後もそれぞれのアカウント情報(IDとパスワード)が必要です。これらの情報がわからないと端末を使用できなくなるため注意してください。

なお、バックアップがない場合、写真や連絡先などの大切な情報を取り戻せなくなる可能性が高くなるので注意しましょう。

【参照】

トラブル② サブスクリプションサービスの解約忘れ

ご自身が何のサブスクリプションサービスに登録しているのか、箇条書きで書き出してみましょう。

サブスクリプションサービスは、解約しない限り原則クレジットカード払いで引き落とされます。ご遺族に経済的な負担をかけないためにも、ご自身で「もう不要だな…」と感じるサブスクリプションサービスは解約して、残したいサブスクリプションサービスはエンディングノートに解約方法をまとめておくといいでしょう。

トラブル③ FXやネット銀行口座情報が共有されていない

故人がFX(外国為替証拠金取引)をしていた場合、利益が出ていればよいのですが、損失が出ていて負債を抱えている可能性もあります。

ネット銀行でも同様に、ご家族が知らないところで口座を開設しており、口座に残高があったり、引き落としが続いていたりするケースがあります。このような場合、相続や支払いの手続きが複雑になってしまうため注意が必要です。

この場合は、パソコンに残る履歴と預金口座のお金の流れを徹底的に調べるようにしましょう。パソコンやスマートフォンから痕跡をたどれないなら、郵便物としてFXやネット銀行の情報が残っているかもしれないので調べてみましょう。こうしたトラブルを防ぐためにエンディングノートを作成し、FXやネット銀行のログイン情報を整理しておきましょう。

まとめ

故人が残す遺産の中で、妻・夫も遺品整理に困るのが「デジタル遺品」です。

ご自身が元気なうちにデジタル生前整理ができれば良いのですが、お亡くなりになったあとにご遺族がスマートフォンやパソコンにログインするための情報がわからないことが多々あります。また、お亡くなりになった後にFXやネット銀行などの手続きをしなければならないので大変です。

生前整理に困ったら「一般財団法人 生前整理普及協会」や、遺品整理に困ったら「一般財団法人 遺品整理士認定協会」などに相談することで、最寄りの“デジタル遺品のプロ”につなげてもらえる可能性があります。しかし、何よりも重要なのは、エンディングノートに必要な情報を漏れなく、分かりやすく記録しておくことです。

このようなデジタル遺品は非常に複雑ですので、お元気なうちにしっかりと整理しておくことをおすすめします。

【参照】

※こちらの記事の内容は原稿作成時のものです。最新の情報と一部異なる場合がありますのでご了承ください。

この記事を書いたひと
teo

teo

遺品整理士資格を取得。現在では資格をいかして、終活・遺品整理・不用品回収などを中心に幅広いジャンルの記事やエッセイを執筆。ライターとして働きながら2児の母親をしています。副業でVライバーもしています。